こんにちは。
2022年12月22日木曜日に放送されたドラマ「silent」最終回の感想とドラマ全体の感想です。やっと書き終わった…。
あらすじは書いていません。
まず始めに想の甥の名前「優生」について感じたことについて、次に最終回の心に残ったシーンや好きなシーンについて、最後にドラマ「silent」全体の感想を書いています。
感想部分にネタバレが含まれますので、まだ視聴されていない方は読む読まないの選択をお願いいたします。
書きたいことがありすぎて6000字弱ありますので、目次から気になるところだけでも読んでいただけると嬉しいです。
想の甥の名前「優生」について
まずはいろいろなところで議論されていた「優生」という名前について。
聴者の私がこの問題について書くべきではないのかもとは思いましたが、正直に感じたことを書きたいと思います。
誰かを傷つけようという意図はありませんが、不快に思う方もいらっしゃるかもしれません。読む読まないの選択をお願いいたします。
想の甥の名前「ゆうき」の漢字が「優生」だったことは、第9話の新生児スクリーニング検査のシーンに違和感を感じてTwitterで検索した時に、こちらのツイートを見て知りました。
※私は字幕を付けてドラマを見ていないので、ドラマを見ているだけでは気付きませんでした。
silent、想の姉が弟と同じように遺伝で耳が聞こえずに生まれてこないか心配していたけど、“ちゃんと”耳が聞こえて生まれてきた子どもに付ける名前が「優生(ゆうき)」なの、たまたまだと思うんだけど、「その文脈でその2文字使うのか……」と、ちょっとヒヤッとした。
— おなか (@HNamachiri) 2022年12月8日
おなか(@HNamachiri)さんは「ヒヤッとした」と書かれていますが、私はこのことを知ってぞわっとしました。
子供に病気が遺伝するのではないかと心配し、新生児スクリーニング検査で耳が聞こえると知って喜び泣いた想の姉・華の子供の名前が「優生(ゆうき)」だと知って、「優生思想」や「旧優生保護法」を連想したからです。
※「優生」という名前自体はステキな名前だと思っています。自分の子供に病気が遺伝するかもしれないと悩むドラマの話の流れの中で、「優生」という漢字が出てきたことに違和感を持ったのであって、「優生」という名前を見ただけで「優生思想」や「旧優生保護法」を連想したことは私はありません。
「silent」第9話の感想の中でも「優生」について少し触れています。
※第9話の感想で、最終回に名前の意味について何かしらの形で触れられるんじゃないかと書きましたが、特に何の言及もなくドラマは終わりました。
第9話を見てからこのことが頭から離れなくて、どういう意図でこの名前が付けられたのかなとずっと考えていました。
そんな中、2022年12月18日日曜日に放送された「ボクらの時代」を見ました。
少し長いですが、「silent」の脚本家・生方美久さんが番組内で仰ったことを引用します。
『silent』とかまさにそうですけど、日本語じゃないとつながらないものがあるじゃないですか。同じ言葉だけど、違う意味で使う、シーンによって違う意味とか、人によって違う意味でとらえられる言葉とか。あれって日本語じゃないと意味がないものを私はすごく使っていて。もし海外で翻訳されたら、海外の人には伝わらないんだっていう悲しさがちょっとあるくらい。
私は、日本のドラマとして、日本語の良さとか、日本語のおもしろさ、ある意味残酷さみたいなものを書きたい
※下線を付け足しています。
生方さんの発言を見て、「優生」という名前の漢字は親が子に「優しく生きてほしい」という意味を込めてつけられている一方
良質の遺伝形質を保つようにすること
という意味の「優生」と同じ漢字である。
同じ言葉だけど使い方で違う意味を持つ、という日本語の残酷な面を表現したのかなと思いました。
「優しく生きてほしい」という意味で名付けられたであろう「優生」と同じ漢字に別の差別的な意味があるという日本語の残酷さ。
制作者側の方々はこの件について何も表明していませんし、「いちゃもんをつけたいだけだろ」とか「問題提起したかったのでは」という意見があるのも知っていますが、私個人としては配慮の足りない残酷な表現だったと思っています。
ただ、ドラマの中で今回のような表現があったからといって、製作者の方々が「優生思想」を持っているとは思っていません。(人は誰しも少なからず差別意識を持っているものかもしれませんが)
接客業をしていた時に聴覚障がい者の方と筆談で少しやり取りした程度の経験しかありませんでしたが、このドラマで便利なツールがあることを知りましたし、聴者も聴覚障がい者も、「伝えたい」「分かり合いたい」という思いがあれば、便利なツールや筆談、手話という言語などでつながることができると改めて感じましたし、ドラマのおかげで「ありがとう」と「ごめんなさい」の手話を覚えました。(湊斗レベル…)
生方美久さんが紡ぐ言葉は、人の心を動かすことができる、大きな感動を生む力がある一方、今回のようにその言葉の力が人を傷つける場合もある。
ドラマの中に残酷で配慮がない点があったと感じましたが、生方美久さんが紡ぐ言葉や物語、丁寧に描かれる登場人物たちを私は美しいと思いました。
生方さんがこれからどんな脚本を書かれるのか、脚本だけでなく監督もするかもしれないと、とても楽しみに思っています。生方さんの作品、あとどれくらい見られるかな。もっともっと見たい。
そう思うのは私が聴者だからかもしれません。でも、これが私の今の正直な気持ちです。
偉そうに書いちゃいましたが、一人のドラマファンとして、生方美久さんのような才能のある方がドラマの脚本を書いてくださることをうれしく思っていますし、これからの活躍も楽しみにしています。
「silent」最終回 心に残った、好きなシーン
ここまでで2500字以上書いてしまいましたが、まだまだまだまだ書きます。読んでくれる人がいますように…。(神頼み)
紬(川口春奈さん)と想(目黒蓮さん)の高校生の時のシーンから始まり、高校生の時のシーンで終わった最終回。
ここからはもしよろしければ、スピッツの「魔法のコトバ」を聴きながら読んでいただけると嬉しいです。スピッツの曲に見合う文章は書けませんが。
最終回くらいヒゲダンの「Subtitle」を載せようかとも思ったのですが、スピッツが使われていることがドラマ視聴のきっかけの一つだったので、最後もスピッツで。
そして最終回はやっぱり「魔法のコトバ」でしょう!
それでは心に残った、好きなシーンごとに感想を書いていきます。
メモで思いを伝える紬
「声ださない」「笑わない」「電話しない」「音楽きかない」「つらくなるならぜんぶやめる」「それでも一緒にいたい」「一緒にいたい」
紬の想への思いがつまったメモ。
二人がぽろっぽろ涙を流すシーンに私もぼろぼろと泣きました。
奈々の想に向けた言葉
私たちはうつむいてたら
優しく声かけてもらっても
気付けないんだよ
見ようとしないとダメだよ
手話の字幕引用:「silent」最終話
奈々(夏帆さん)の言葉はうつむいてたら手話が見えないってこともあるけれど、この言葉は誰にでも当てはまることだとも思います。
人の意地悪な言葉や行為にばかり目が行きがちだけれど、人の優しさに気付ける人間になりたいものです。これがまあ難しい。
湊斗くん、絶対に幸せになってね!
フットサル場での湊斗(鈴鹿央士さん)と拓実(井上祐貴さん)の会話
拓実「湊斗くん、絶対幸せになってね」
湊斗「今、幸せじゃないって決めつけんな」
拓実「決めつけてませーん」
セリフ引用:「silent」最終話
湊斗に幸せになってほしいと思っている視聴者の声を拓実が代弁してくれたと思ったら、その答えが「今、幸せじゃないって決めつけんな」って。
花束を持っている人を見て幸せな気持ちになれる湊斗は、日々の生活の中でも幸せを見つけることができるのでしょう。
それでも願う。湊斗くん、絶対幸せになってね!
いってらっしゃい
最終回はたくさん人の「いってらっしゃい」が紬を送り出していました。
古賀セン(山崎樹範さん)、真子(藤間爽子さん)、お母さん・和泉(森口瑤子さん)、湊斗の「いってらっしゃい」。
どの「いってらっしゃい」にも送り出す人の温かい気持ちとエールが込められているように感じて、私もそんな風に子供に「いってらっしゃい」と言いたいなと思いました。
黒板に書いた紬の言葉
紬は教室で最初手話で話そうとしますが、途中でやめて黒板に文字を書き出す。
これってなんでなのかちょっとわからなかったんですけど、目を見て話さなくていいからなのかな。
再会できてよかった
また話せてよかった
また好きになれてよかった
黒板に書いた言葉引用:「silent」最終話
第5話で想が自分の思いを書いたノートを紬に見せていたシーンを思い出しました。
紬はいつも前向きでまっすぐ。「出会わなければよかった」とか「好きにならなければよかった」とは思わない。ステキだ。
紬の想への言葉
人それぞれ違う考え方があって
違う生き方してきたんだから
分かり合えないことは絶対ある
他人のことを可哀想に思ったり
間違ってるって否定したくもなる
それでも一緒にいたいと思う人と一緒にいるために
言葉があるんだと思う
たぶん全部は無理だけど
できるだけ分かり合えるように
たくさん話そうよ
手話の字幕引用:「silent」最終話
最終回の予告の動画でも川口春奈さんが上で引用した言葉の一部分をナレーションしていました。
予告動画では「声」で、最終話では「手話」で伝えられた言葉。
この紬の言葉にドラマで伝えたいことが詰まっているんじゃないかなと思っていて。違うかもだけど、「silent」にたくさん出てきたステキなフレーズの中で一番好きな言葉です。
分かり合いたい人と言葉を尽くして語り合う。
相手の思いを知るために、自分の思いを知ってもらうために二人はこれからもずっとたくさん話していくのでしょうね。
初めて出会ったところから再び始める
体育館で「言葉」という作文を読んでいる想を見て恋に落ちた紬。
想も同じ時に紬の存在に気付いたと明かされました。
そして8年後は手話で再び読まれる想の作文「言葉」。
「今」を始めるために「過去」から始め直していて。
学校の帰りに手をつないで帰ったり、プレゼント交換(かすみ草)をしたり、「42回」紙を折ると月に届く話をしたり。
再び二人の時間が前に進み出した気がして、見ていて嬉しく思いました。
奈々から春尾先生への花束
奈々から春尾先生(風間俊介さん)への花束、オレンジ系できれいでした~。
春尾先生がずいぶん前に合格していた手話通訳士のお祝いの花束。この二人も離れていた8年の溝を埋めていくんでしょうね。二人のその後が見たくてたまらない…。
この時の奈々と春尾先生のやり取りもかわいらしくて。
花束のお返しがほしいと言う奈々に、クリスマスプレゼントに何がほしいのか聞いている時の春尾先生(風間先生)の顔が嬉しそうで嬉しそうで。愛しい人を見る表情。
そして春尾先生の横にいる奈々が一番かわいいし!
二人のその後のスピンオフおかわり!(何度も書いている…)
おまけで。
奈々の花束は湊斗におすそ分けされ、かすみ草をもらった湊斗は紬におすそ分けする。かすみ草を紬に渡して湊斗は幸せを感じているように思いました。湊斗くん、絶対幸せになってね…。
耳打ちした二人だけにはわかる魔法のコトバ
そして最後の耳打ちのシーン。「紬」って言ったのかな。
ドラマを見た時ににやにやしながら「視聴者には教えてくれんのか~い」って思わず声に出して言ってしまったんですけど、でも、そこがいい。
「二人だけにはわかる魔法のコトバ」という終わり方に悶絶しました。
ステキな終わり方だったと思います!
ドラマ「silent」全体の感想
最後に「silent」全体の感想を。
すべてのシーンに意味があった
「silent」の感想をブログで書く時に心に残ったシーン、好きなシーンを書いていたんですけど、すべてのシーンに意味があって、無駄なシーンが一つもなかったように思います。
すべての登場人物が魅力的だった
主要な登場人物だけじゃなく、悪気なく嫌な雰囲気を出しまくる田畑(佐藤新さん)でさえ魅力的で。拓実もいい。古賀センもおもしろかった。
生方さんは人物描写が巧みですごい。
恋愛ドラマだけではない人と人との物語
恋愛だけじゃない、友人関係、家族関係、職場の人間関係まで細やかな人と人との物語がたくさん散りばめられていました。
そこまで描くからこそすべての登場人物の魅力が伝わってきたんだと思います。
映像と音楽の美しさ
肌寒い季節を感じさせる、澄んだ映像と音楽。ステキだった。
セリフの言葉選び
好きなセリフもたくさんありました。
1話の「へらへら生きてる聴者」とか、7話の「少ないっているってことだもんね」とか「気持ちを伝えようって必死になってくれる姿ってすごく愛おしい。まっすぐにその人の言葉が自分にだけ飛んでくる」とか、8話の「ありがとうって使いまわしてもいいの?」とか。
生方さんの生み出すセリフにハッとしたり、共感したり、心を揺さぶられたり。
生方さんの言葉選びをまた新しいドラマで見ることができるの日が待ち遠しいです。
最後に
「silent」最終回放送から1週間以上経ってしまいましたが、ようやく書き終わりました。
最後まで読んだ人はいたのでしょうか…一人もいない気がする…。最後まで読んだのは書いている自分だけかもしれないけれども、書いていて楽しかったからよし!
「silent」というすばらしい作品をつくってくださったすべての方に感謝します。
ステキな作品を見せていただき、ありがとうございました!
一年に一回でいいから続編を年末にでも放送してほしい。続編が見たい。特に奈々と春尾先生のその後を見たい。
それでは、すばらしいドラマライフを~。